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プレス加工の「バリ」発生原因と対策・対応

2024.02.08

プレス加工における「バリ」は、製品品質や作業安全において避けて通れない課題です。図面に「バリなき事」と指定されるほど、バリの有無や大きさは品質評価の重要な指標となっています。バリとは材料のエッジに意図せず生じる小さな突起(かえりとも呼ばれます)で、放置すると組立不良や製品性能の低下、作業者のケガにつながる可能性があります。本記事では、プレス加工でバリが発生する主な原因と、それを防ぐための対策・対応策、さらに効果的なバリの除去方法について現場目線で解説します。


バリとは何か?その影響とは

バリ(かえり)とは、金属のせん断加工や切削加工の際に材料の縁に生じる不要な突起物です。プレス加工品では打ち抜きや曲げ加工の際、パンチとダイの刃先で材料がちぎれるように破断する過程で鋭い突起が残ることがあります。バリは製品のエッジに残る鋭利な段差で、断面には上下面で寸法が異なるテーパー形状を伴うのが特徴です。小さな突起とはいえ無視できず、放置すると以下のような悪影響があります。

加工精度の低下

バリがついたままだと部品寸法の測定に支障をきたし、正確な寸法が測定できなくなります。組付け時にもバリが干渉し、部品どうしが正しくはまらない原因になります。結果として再加工や手直しが必要になり、生産効率の低下を招きます。

製品機能・耐久性への悪影響

組立部にバリが残存すると、隣接部品とのスムーズな摺動を妨げ異音や引っ掛かりの原因になります。さらに、バリがあることで局所的に応力が集中し、部品の摩耗や破損を早めて製品寿命を縮める恐れがあります。脱落したバリ片が内部に混入すれば機器の故障にも直結しかねません。

安全性・信頼性の問題

鋭いバリは作業者やエンドユーザーにケガを負わせる危険があります。製造現場で手や指を切るリスクが高まるほか、バリ付きの製品が市場に出れば使用時にユーザーが負傷する事故にもつながります。こうした不具合は製品リコールやクレーム、企業の信用失墜につながり、最悪の場合法的責任を問われる可能性もあります。

生産コスト増大

バリによる不良品の発生や追加のバリ取り作業は、生産ラインの手戻りを増やしコストアップを招きます。歩留まり低下や不良廃棄の増加は企業にとって経済的損失となり、信頼性の低下にも直結します。

以上のように、バリは品質・安全両面で看過できない問題です。そのためバリ発生を抑制し、確実に除去することが高品質な製造には欠かせません。


プレス加工でバリが発生する主な原因

プレス加工時のバリ発生には様々な要因があります。現場でよく見られる主な原因を整理すると次のとおりです。

金型刃先の摩耗

プレス金型(パンチ・ダイ)は使用を重ねるにつれて刃先が摩耗し、材料との隙間(クリアランス)が広がります。刃先が丸くなると材料を十分に切り出せず、せん断時の亀裂発生が遅れて大きなバリが生じます。摩耗により切れ味が低下した刃物は材料を押し潰すように変形させるため、結果としてバリ発生が増えてしまいます。

金型設計の不良・不適切なクリアランス

初期の金型設計で刃物形状やクリアランス設定が不適切だと、材料を綺麗に切断できず余分な部分が残ってバリの原因となります。特にクリアランス(パンチとダイのすき間)は板厚や材質に合わせて最適値に設定する必要があります。一般に板厚の約1/2~1/3程度がせん断面として残るクリアランスが適正とされ、これを外れるとバリが大きくなりがちです。例えばクリアランス過大では亀裂同士の繋がりが遅れバリが大きく、逆に過小では二次的なせん断が発生してヒゲ状の細かいバリ(糸バリ)が発生します。適切なクリアランス設計はバリ抑制の基本条件です。

金型・プレス機の芯ずれや平行度不良

金型の上下位置ズレやプレス機の平行度不良により、片側だけクリアランスが広くなると片バリ(一方の面だけバリが大きく出る現象)が発生します。例えばタレットパンチプレスで上下の金型芯がずれている場合、ずれた側で過大クリアランスとなり大きなバリが出ます。またプレス機構のガタつきやフレームのたわみでパンチとダイの平行が崩れると、せん断面が均一にならず一部にバリが発生しやすくなります。

原材料の性質・品質

素材自体の問題も見逃せません。材料に混入した不純物や異物があると、せん断時にそれらがうまく切断されずバリ片となって残ることがあります。また素材の硬度や延性もバリ発生に影響します。一般に靭性(ねばり)の高い材料はせん断時に塑性変形が大きく、切り口が伸びてバリが発生しやすい傾向があります。一方で硬く脆い材料は割れやすいため大きなバリは出にくいものの、欠けや微細なバリ(カケ、チッピング)を生じることがあります。素材の板厚ばらつきもクリアランス不適合を招き、バリ発生の一因となります。

加工条件の誤り(圧力・スピード・固定方法)

プレス条件の設定不良もバリ発生につながります。例えば加圧力(トン数)が不足すると材料が完全に打ち抜かれずつながりが残ってバリになりますし、過剰だと材料が押し広げられて余分な突起が出ることがあります。加工スピードが速すぎると刃物摩耗や熱の影響で切断面が荒れバリが増える場合もあります。さらに材料の固定が不十分だと、打ち抜き時に材料が振動・変位して工具との位置関係がズレるため、切断面が乱れてバリを誘発します。適切なストリッパーやクランプで素材をしっかり押さえていないと、加工中の弾性変形(材料の逃げ)によってバリが生じる原因となります。このように加工条件・環境の誤りもバリ発生要因の一つです。

以上のような原因を踏まえ、現場では金型・設備・素材・条件の各面からバリ発生を抑える工夫が求められます。それでは具体的な対策について見ていきましょう。


バリ発生を防ぐための主な対策

プレス加工におけるバリを極力発生させないためには、以下のようなポイントに留意した対策が有効です。各対策を組み合わせることで、バリ発生の最小化と製品品質・生産効率の向上が期待できます。

1.金型の定期メンテナンスと刃先管理

金型刃物(パンチ・ダイ)は常に鋭利な状態に保ちましょう。定期点検で摩耗度合いや欠けを確認し、早めの刃先研磨・交換を行います。刃先が鈍るとバリ増加に直結するため、摩耗したまま使い続けないことが重要です。また金型のガイドポストや機構部も点検し、芯ずれやガタつきがない良好な精度を維持します。整備が行き届いた金型は安定したせん断を実現し、バリ発生を抑制できます。

2.適切な金型設計とクリアランス最適化

金型を新規設計・製作する段階で、材料に合ったクリアランス値と刃先形状を設定します。板厚・材質ごとの最適クリアランス値のデータに基づき、せん断面が板厚の1/2~1/3程度確保できるような寸法公差で金型を仕上げます。高精度な型合わせ面の加工と組立も重要です。合わせ面にスキマが生じないよう金型部品の精度管理を徹底し、μmオーダーの高い平面度・平行度を追求します。さらにパンチ刃先に微小な面取り(R形状)を付与するなど、バリを出にくくする工夫も有効です。適切な金型設計は後工程の手直し削減にも直結し、総合的な生産性向上につながります。

3.高品質な原材料の使用と素材管理

材料選定・管理の段階でもバリ発生リスク低減の工夫ができます。仕入れ素材はミルシート等で成分や純度を確認し、不純物の少ない高品質な材料を使用しましょう。素材表面のスケールや錆が刃物にダメージを与える場合もあるため、必要に応じて酸洗い鋼板など表面状態の良い材料を選ぶのも一手です。また材料ロット間で硬度や板厚が大きく変わらないよう管理し、想定外のクリアランス不良を防止します。適切な材料を使うことで、せん断時に材料がスムーズに分断されバリの形成が抑えられます。結果として加工プロセスの安定化と製品品質の向上に寄与します。

4.加工条件の正確な設定と最適化

プレス機の設定値を製品・材料に合わせて最適化します。必要な加圧力を確保しつつ、過加圧にならないようトン数を調整します。特に新しい金型を使用する際は、初回加工品のバリ高さを測定し適正圧を見極めると良いでしょう。スピードについては、あまりに高速だと刃物の温度上昇や材料のせん断応答の影響でバリが増える場合があります。適切なストローク速度や送りピッチを選定し、必要に応じてプレス油剤(潤滑剤)を使用して切断抵抗を減らします。潤滑によって摩擦摩耗が減少し、刃先温度上昇も抑えられるため、結果的にバリ発生を減らす効果があります。また量産段階では加工ごとのバリ高さをモニタリングし、傾向変化があれば条件を微調整するなどフィードバック制御することも有効です。

5.材料の確実な固定と設備精度の維持

打ち抜き加工時には、ワーク材をしっかり固定して材料の逃げを防止します。適切なストリッパやホルダで材料を押さえ、加工中の振動やたわみを極力抑えましょう。薄板や複雑形状の加工では専用治具で材料を支持することで安定性が増し、バリ発生を抑えることができます。さらにプレス機自体の精度管理も重要です。定期的に平行度やガイドのクリアランスを点検・調整し、上下型の芯ずれを防ぎます。機械の剛性アップや振動対策(防振台設置など)も振動由来のバリ低減に有効です。設備・治具面の対策を講じることで、加工精度を高めバリの発生を防止できます。

以上の対策を講じても、プレス加工においてバリの発生を完全になくすことは難しいのが現実です。重要なのは「バリを極力小さく抑え、残ったバリは確実に除去する」という姿勢で製造プロセスを設計することです。その後工程として適切なバリ取り工程を組み込むことで、最終的な製品からバリを一掃し品質不良を防ぐことができます。次に、効率的なバリ除去方法について見てみましょう。


プレスバリの効果的な除去方法

プレス加工後にどうしても残ってしまうバリは、バリ取り(デバリング)によって除去する必要があります。現場で実践されている代表的なバリ除去方法には以下のようなものがあります。

手作業によるバリ取り(ヤスリ・面取り工具)

比較的少量生産や試作段階では、熟練作業者がヤスリやカッターナイフ、ベベラー(面取り工具)を使ってエッジを削りバリを取ります。一般的にはバリ部に45度程度の面取りを施す要領で軽く削り落とす方法が用いられます。細かな調整が効く反面、作業者の負担やバラツキの問題があるため、大量生産には不向きです。

バレル研磨(メディアによる一括バリ取り)

小物部品や複雑形状のワークにはバレル研磨(バレル処理)も活用されます。バレル研磨機に部品と研磨石(メディア)やコンパウンドを投入し、樽状の容器を回転・振動させることで部品同士とメディアを擦り合わせ、一度に多数の部品のバリを除去・エッジを滑らかにします。微細なバリやエッジの丸め加工に有効で、大量の部品を一括処理できる利点があります。ただし根元が太いしっかりしたバリはバレルでは除去しきれない場合もあります。

研削・研磨装置による機械的除去

厚板の打ち抜き後にできた大きなバリや、平面状の部品全周にわたるバリには、工作機械による研削・研磨が効果的です。平面研削盤でエッジを研削したり、ベルトサンダーやグラインダーでバリを削り落とす方法が取られます。これらは人手より安定した力で加工できるため、厚みのあるバリでも確実に除去できます。ただし研削熱や研磨粉が発生するため、部品の温度上昇や洗浄工程にも留意が必要です。

自動バリ取り機の導入

近年では、専用の自動バリ取り機を製造ラインに組み込む企業も増えています。ブラシヘッドや研磨ホイールを備えた装置にワークを通過させ、上下両面から同時にバリを研磨除去する仕組みで、大量生産でも安定してバリ取りが可能です。弊社トーバン工業の提供する「BURRY TACK」シリーズも、まさにプレス加工品の自動バリ取り・バフ研磨を得意とする装置です。機械化により作業者の負担軽減はもちろん、加工条件が標準化されることで仕上がり品質の均一化と takt time 短縮を両立できます。初期コストはかかりますが、量産現場では省人化・品質向上によるコスト削減効果が大きいため、導入メリットは非常に高いでしょう。

以上のように、製品形状や生産量に応じて最適なバリ除去法を選択することが重要です。バリを確実に除去する工程を設けることで、最終製品の品質安定と信頼性確保が可能となります。


まとめ:バリ対策で製品品質向上!

プレス加工の現場においてバリをゼロにすることは難しいですが、「発生させない工夫」と「確実に取り除く対策」の両面からアプローチすることでバリ問題を最小化できます。金型・設備を適切に管理し発生自体を抑えつつ、残留するバリは確実に除去する――この徹底が製品品質の向上と不良ゼロに直結します。実際、バリの高さは製品良否や金型メンテナンス時期を判断する指標にもなっています。バリ対策にしっかり取り組むことで、顧客満足度の向上や現場の安全確保、さらには企業競争力の強化につながるのです。

どうしても残ってしまうバリについてお困りの場合は、適切なバリ取り工程の導入によって解決できます。弊社では長年培った技術力で、プレス加工品のバリ取りに最適な専用機をご提案・製造しております。中でも「BURRY TACK」シリーズは小物から厚板まで幅広いプレス部品のバリ取り・研磨に対応可能で、自動化による安定品質と作業効率アップに貢献いたします。現場のニーズに合わせたオーダーメイドのご相談も承りますので、バリ対策でお悩みの際はぜひお気軽にお問い合わせください。お電話(045-542-4778)やお問い合わせフォームより承っております。バリのない高品質な製品づくりを、トーバン工業が全力でサポートいたします!

弊社製品は、以下の様にプレス加工品のバリ取りを非常に得意としております。

※表は左右にスクロールできます

小物ワーク加工 プレス加工品 ドロス除去 ヘアライン加工 酸化被膜除去 シール材加工品 異形ワーク 異物除去(洗浄)
BURRYTACK Ⅲ-R型
BARRYTACK Ⅲ-CT型(乾式)
BARRYTACK Ⅲ-CT型(湿式)
BARRYTACK VC-600型(乾式)
BARRYTACK Ⅱ-CT型(乾式)
BARRYTACK Ⅱ-CT型(湿式)
BURRYTACK Ⅱ-CT-WF型
BARRYTACK PB型(乾式)
BARRYTACK SP型
金属板自動洗浄機(炭化水素)
金属板自動洗浄機(温水)

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