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切削バリについて
2024.04.04
切削バリの基礎知識
切削バリとは何か
切削バリとは、工作物の切削や穴あけ、プレスなどの加工工程で材料のエッジに意図せず生じる小さな突起や薄片(いわゆる「カエリ」)のことです。例えば金属板を穴あけした際に、裏面の穴の出口にできる鋭い縁が典型的なバリです。JIS規格(JIS B 0051-2004)では「エッジの幾何学的形状の外側に残留した加工または成形工程由来の部分」と定義されています。バリは金属加工のみならずプラスチック成形など幅広い製造プロセスで発生しうる普遍的な現象です。加工条件や工具状態に関わらず完全にバリ発生をゼロに抑えることは難しく、製造業の現場では長年の課題となっています。
バリの発生メカニズム
切削加工中にバリが生じる主な原因は、工具が材料を切り進む際に材料を完全に除去できず一部を押し出してしまうことにあります。刃先が摩耗して切れ味が落ちたり、切削速度・送り速度が不適切だったりすると、材料が塑性変形してエッジに押し出され、バリとして残留します。特に工具の摩耗や欠損で切削性能が低下すると、削り取れなかった材料が「めくれ」上がって突起になる現象が顕著です。また、ドリルで穴あけを行う場合にも、貫通直前に材料が破断せず伸びることで出口側にバリができます。このように工具の状態(摩耗・欠損)や切削条件(速度・送り・刃物角度)、素材の性質がバリ発生に大きく影響します。対策としては、切削条件の最適化や切れ味の良い工具の選定・管理、適切な切削液供給や材料側の改善(例えば被削性の良い材質の採用)などが挙げられます。実際、工具摩耗に注意し定期メンテナンスを行うことで、バリ発生をかなり低減できることが知られています。
発生メカニズムと問題点
バリがもたらす問題点
切削バリをそのまま放置すると、製品品質や作業安全において様々な問題を引き起こします。主な問題点を以下に整理します。
- 機能・精度の低下
バリが機械部品の嵌合面や摺動部に残ると、隙間を作ったり摩擦を増やしたりして、製品本来の機能を損ねます。例えばエンジンやポンプ内部の部品にバリが付着すると、作動不良や摩耗の促進につながります。また、測定面にバリがあると寸法測定に誤差が生じ、製品の加工精度を正しく評価できなくなる恐れがあります。 - 信頼性・耐久性の低下
電子機器や精密機械では、ごく小さなバリでも接触不良や組立不良の原因となります。バリが原因で部品がしっかり組み付かないと、製品全体の信頼性に影響します。さらに運転中にバリが剥離・遊離して回路や軸受に混入すると、思わぬ故障や寿命低下を招くこともあります。例えば油圧機器では、配管内の微小なバリ片がバルブに噛み込んで動作不良を起こす事例も報告されています。 - 安全性の低下
製品や部品のエッジに尖ったバリがあると、人が触れた際に怪我をするリスクがあります。現場でのハンドリング中に手指を切る事故や、組立作業中にバリが刺さるといった労働災害につながります。また、大きなバリは作業着や手袋を引っ掛けてしまい、思わぬ二次災害を誘発する危険もあります。 - 製品品質(外観)の低下
バリが外観に及ぼす影響も無視できません。精密機器や高級製品では見た目の美しさも品質の一部です。バリが残っていると外観上の粗さ・汚さとして顧客に認識され、ブランドイメージを損ないます。特に外観重視の製品では、たとえ機能に支障がなくともバリひとつでクレームにつながる可能性があります。
以上のように、切削バリは機能・精度面から安全・美観に至るまで多岐にわたる悪影響を及ぼします。そのため製造現場では、加工工程で発生したバリを確実に除去する「バリ取り工程」が品質確保と安全管理の上で極めて重要な位置を占めています。
バリ除去方法
切削バリを除去する方法には様々な手法があります。製品材質やバリの大小に応じて、従来より以下のような方法が使われてきました。
- 手作業によるバリ取り
最も基本的な方法が作業者の手による除去です。ヤスリやスクレーパー、ナイフ、サンドペーパー、グラインダーなど手工具を用いてバリを削り落とします。職人の熟練を要しますが、小さな箇所や複雑形状の細部など機械が届きにくいバリも除去できる柔軟性があります。ただし人手に頼るため仕上がり品質のばらつきや作業時間の長さが課題です。近年は人手不足も相まって、大量生産現場では手作業バリ取りの維持が難しくなっています。 - 機械的なバリ除去
バリ取り専用機や工作機械によって自動的にバリを削り取る方法です。代表例はバリ取り機(研磨機)の導入で、ワークを装置に通せば一括でエッジを面取り・研磨してくれるため高い作業効率を発揮します。自動送りで安定した仕上げが可能なので、大量生産品のバリ取りに適しています。他にもバレル研磨(タンブラー)やショットブラストなど、ワークと研磨メディアを一緒に容器内で攪拌してバリを削り落とす「バリ取り仕上げ装置」も広く使われています。機械的方法は一度に多数の部品を処理でき品質の均一化にも寄与しますが、装置導入の初期コストや装置の占有スペースを考慮する必要があります。 - 化学的な処理
薬品の力でバリを溶解・除去する方法です。アルカリ性や酸性の特殊な溶剤に部品を浸漬し、バリ部分のみを溶かしたり脆くして洗浄で除去します。あるいは電解液中で電流を流して金属を溶解する電解バリ取り(電気化学的加工)もこのカテゴリです。化学的手法は人手が届かない微小な内径部のバリ除去や、一度に多数の部品を処理する際に有効です。ただし薬品の取り扱いには十分な安全管理が必要で、環境規制への対応やコスト面も含めた検討が欠かせません。 - 高圧水流による除去
ウォータージェット加工や高圧洗浄機を使い、細いノズルから噴射する高圧の水流でバリを吹き飛ばす方法です。工作機械で穴あけ加工後の微細なバリや、樹脂成形品の薄いバリを除去する用途に適しています。水だけで加工表面を傷めずバリだけを除去できる点が利点ですが、設備としてポンプや回収タンク等が必要で、水濡れによる錆対策や後処理(乾燥工程)も考慮する必要があります。 - レーザー・熱処理
レーザー照射によってバリを局所的に加熱・蒸発させて除去する先端的方法もあります。レーザーは微小なバリでも精密に焼き切ることができ、工具が届かない隅部の処理にも有効です。熱による影響範囲が小さいため高精度な仕上げが可能ですが、設備コストが高く主に航空宇宙や医療分野など高付加価値製品向けに利用されています。また、レーザー以外に熱エネルギーを利用したバリ取りとして、可燃性ガス中で火花放電を起こし一瞬でバリを燃焼除去する熱的バリ取り(サーマルデバリング)も存在します。これら熱処理法は短時間で多数の微小バリを同時に焼却できる反面、装置が大型になることや安全対策の徹底が求められます。
以上、バリ取り方法には手仕上げから専用機械、化学処理やレーザーまで多彩な選択肢があります。近年では製品の高精度化・多様化に伴い、複数の手法を組み合わせて最適なバリ除去プロセスを構築するケースも増えています(例えば機械研磨で大きなバリを落とした後、薬液処理で微細バリを除去する、といった二段構えの工程など)。現場ではコスト・安全・環境への配慮もしながら、自社製品に適したバリ取り技術を選定することが重要です。
バリ除去自動化における当社製品の利点
トーバン工業株式会社(当社)は、創業以来150年以上にわたり培ってきた金属加工技術を活かし、バリ取り機を中心とした表面仕上げ装置の開発・製造を行っております。当社の提供する自動バリ取り機「バリタック(BURRY TACK)シリーズ」は、多くの製造現場でバリ取り自動化を支える存在となっています。本節では、当社製品がバリ除去自動化にもたらす利点についてご紹介します。
安定した高品質仕上げと独自技術
当社のバリ取り機は独自開発の機構により高品位で安定したバリ除去を実現します。例えば平面バリ取り機「BURRY TACK III-CT型」では、2本の研磨ホイールをそれぞれ独立駆動し、正逆両回転と左右へのオシレーション運動を組み合わせて加工します。この特殊な2軸研磨方式によって、ワーク上のあらゆる方向のバリをムラなく均一に除去することが可能です。従来の一方向からの研磨では取り残しがあった複雑形状部品でも、当社機なら一度で隅々までバリ取りできます。また、本機種は乾式タイプと湿式タイプの両モデルを用意しており、加工材質や仕上げニーズに合わせて最適な方法を選択できます。乾式では粉塵対策、湿式では冷却・切削液使用による切削面品質向上など、それぞれの利点を活かした加工が可能です。
優れた作業効率と省力化
自動バリ取り機の導入によって、人手作業と比べ飛躍的な作業効率アップが図れます。当社機を導入いただいた現場では、「人手の数倍のスピードで処理でき、生産性が向上した」との評価を多数頂いております。例えば自動車部品メーカーA社の導入事例では、当社バリ取り機による自動化後は人手の4倍の処理速度を達成し、仕上がりのバラつきも大幅に低減しています。これにより不良品削減と効率化によってトータルコストが約40%削減できたという報告もあります。このように高い生産性と安定品質を両立できる点は、当社製品の大きな強みです。
豊富なラインナップとカスタマイズ対応
当社では板金部品向けから精密部品向けまで用途に応じた様々なバリ取り機・研磨機を取り揃えております。平面研磨型の「バリタック」シリーズ以外にも、回転部品のエッジ仕上げを行うバフ研磨機や、微細バリを除去する電解複合研磨装置など、ニーズに合わせた機種展開があります。また、当社は研磨ホイールやブラシなど消耗工具も自社製作しており、加工素材や求められる表面粗さに最適な工具を提供可能です。自社製ホイールにより加工条件の微調整が容易で、お客様ごとの多様なバリ取り課題に柔軟に対応できる体制を整えています。
信頼性と導入実績
当社バリ取り機は1970年代に製品化されて以来、長年にわたり改良と実績を積んできました。1977年には当社初の平面バリ取り機が日刊工業新聞社の「十大新製品賞」を受賞し、その後も自動車・航空機・電子部品など幅広い業界へ導入が進んでいます。特に自動車業界では早くから高く評価され、1994年には大手自動車部品メーカーの24時間連続稼働ラインに当社バリタックが組み込まれ、過酷な生産現場で安定稼働を続けた実績があります。このような導入例が示す通り、当社製品は信頼性・耐久性に優れ、連続運転が要求される自動化ラインでも安心してご利用いただけます。また、全国各地の製造現場から寄せられるフィードバックを製品改良に活かし、アフターサポートやメンテナンス体制も充実させています。熟練スタッフによる導入支援や操作トレーニングも行っており、初めて自動バリ取り機を導入するお客様でもスムーズに立ち上げられるようサポートいたします。
まとめ
切削バリについて、基礎知識から除去方法までご紹介いたしました。
当社トーバン工業は、「バリ取り」というニッチでありながら製造現場において極めて重要な分野において、常に技術革新とサービス品質の向上に取り組んでおります。
お客様の現場課題に真摯に向き合い、最適なバリ取りソリューションをご提供することで、日本のものづくりを下支えしてまいります。
切削バリに関するご相談や、自動化のご要望がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
長年にわたり蓄積してきたノウハウと最新技術を活かし、貴社の生産性向上と品質改善に貢献いたします。
以下の弊社製品は、切削バリのバリ取りを非常に得意としております。