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樹脂(プラスチック)製品のバリ取りが難しい理由と効果的な解決策

2024.05.07

樹脂(プラスチック)製品の「バリ取り」とは、成形品や加工品に発生した不要な突起(バリ)を取り除く工程のことです。樹脂材料の成形では、射出成形の金型合わせ目から樹脂が漏れて固まることでバリが生じたり、切削加工時に素材が伸びて細かなバリが残ったりします。バリは製品の寸法精度や外観を損ない、放置すればユーザーのケガや製品不良の原因となるため、確実に除去することが求められます。しかし金属と比べて樹脂のバリ取りは非常に難しいと言われており、現場では生産工程上の大きな課題となっています。本記事では、樹脂バリ取りが難しい理由と、その解決策となる代表的な方法について、経営層の方にも分かりやすく解説します。


樹脂バリ取りが難しい主な理由

樹脂製品のバリ取り作業が厄介なのには、主に以下のような構造的理由があります。

理由1:樹脂素材特有の柔軟性・低耐熱性

樹脂(プラスチック)は素材の種類ごとに硬さや弾力が大きく異なり、バリ取り時にはそれぞれに応じた繊細な対応が必要です。例えばポリエチレンのような柔らかい樹脂では刃物で削ると製品が歪んだり変形したりしやすく、一方でポリカーボネートのように硬い樹脂なら、変形させない程度の適切な力加減で削る必要があります。さらに樹脂は金属より融点・軟化点が低く熱に弱いため、バリ取り中の摩擦熱で溶けたり形状が崩れたりする恐れもあります。高速回転工具を当てると発生する熱で樹脂製品が溶け出してしまうケースもあり、こうした素材特性が樹脂バリ取りを難しくしています。

理由2:複雑な形状と微細なバリへの対応

樹脂製品には複雑な三次元形状や細かなディテールを持つものが多く、そうした部位に発生したバリを完全に取り除くのは容易ではありません。微細なバリが奥まった狭い隙間や曲面部分に付着すると、工具を当てること自体が難しくなります。また、バリ取り作業そのものが精密で根気の要る手作業になりがちで、職人の熟練した技術や専用工具を要する細かな作業となります。製品形状が複雑になるほど「全てのバリを見逃さず除去する」ことが難しく、作業時間も増大してしまいます。

理由3:厳しい品質基準(バリ残しが許されない)

樹脂製品の用途によっては、一片のバリ残りも許されない高い品質基準が課せられます。例えば医療器具や自動車部品、子供向け玩具など、安全性や精密さが求められる分野では、ごく小さなバリでも製品性能や使用時の人体への悪影響につながる可能性があります。実際、医療機器では微細なバリが残っているだけで重大な不良と見なされ、製品として出荷できません。このように「絶対にバリを残せない」という要求に応えるためには、寸分の狂いもなく入念にバリを除去する必要があり、作業難易度を一段と高めています。

理由4:人手依存による生産性・コストの問題

以上の理由から、樹脂のバリ取り作業は従来熟練作業者の手作業に頼る場面が多くなりがちです。手作業は柔軟な対応と高精度が可能な反面、作業品質が作業者の熟練度に左右され、人件費もかさむという欠点があります。実際、職人の習熟度によって仕上がりに差が出たり、量産の現場では人手によるバリ取り工程がボトルネックとなって生産効率を下げるケースも少なくありません。さらに近年は製造業全体で人手不足や人件費上昇が深刻化しており、安価な労働力に依存したバリ取りは持続困難になりつつあります。事実、比較的人件費の安い中国でさえバリ取り要員の確保が難しく、生産に支障を来す企業も出ています。このように、人手に頼った従来のやり方では品質確保やコスト面で限界があり、新たな解決策が求められています。


樹脂バリ取りの主な方法と最新ソリューション

樹脂(プラスチック)製品に付いたバリを取り除くため、現場では様々な手法が用いられています。製品の材質や形状、バリの大きさに応じて、以下のような方法を使い分けるのが一般的です。

手作業によるバリ取り

小型の樹脂部品や形状が複雑な箇所の仕上げには、今なお手作業でのバリ取りが広く行われています。作業者がカッターナイフや専用のバリ取りナイフ、ヤスリなどを用いて一つ一つ丁寧に削り取っていく方法で、最もシンプルながら高い精度で仕上げられる利点があります。人の手で微妙な力加減を調整できるため、前述した柔軟な樹脂素材の扱いやごく細かいバリ除去にも対応しやすい点もメリットです。一方で前述の通り、人手に頼る手法は熟練度によって品質がばらつき、人件費も増大するため、大量生産の現場ではコスト高・時間増につながります。そのため近年では、「荒取り(大まかなバリ除去)は機械に任せ、最終仕上げのみ手作業で行う」というプロセス分担も増えてきました。

機械・工具を使ったバリ取り

工作機械や専用工具を使って機械的にバリを除去する方法も、樹脂バリ取りで多用されています。例えば、NC工作機(マシニングセンタ)や自動盤にエンドミル(刃物)や回転ブラシを取り付け、プログラム制御で製品エッジを削ってバリを落とす方法です。機械によるバリ取りは人手より安定した品質で効率良く処理でき、工程全体の加工時間短縮にも寄与します。ただし形状やバリの場所によっては一台の機械で完全に対応できないことも多く、製品ごとに適した治具や工具を用意したり、複数種類のバリ取り装置を導入したりする必要があります。

なお樹脂向けには、超音波振動カッターと呼ばれる特殊な工具も利用されています。超音波カッターは刃物を高速微振動させることで、樹脂のバリに触れるだけでスッと切断できる装置です。硬い金属バリの除去とは異なり、プラスチックの薄いバリであれば軽く当てるだけで除去でき、しかも刃の摩耗が少ないという特徴があります。このような専用機・専用工具を活用することで、手作業に頼らずとも安定したバリ除去が行える場合があります。

研磨・ブラストによるバリ取り

製品表面を研磨したり、粒子を吹き付けてブラスト処理することでバリを除去する方法も広く使われています。ヤスリやサンドペーパー、バフ(布やフェルトの研磨工具)でバリ部分を磨き落とせば、バリ除去と同時にエッジの面取りや表面仕上げも行えるため一石二鳥です。一方、部品点数が多い場合にはバレル研磨(多数の部品と研磨石を回転樽に入れて一括研磨)やショットブラスト(研磨砂を噴射)によって、一度に大量の部品を処理する方法も取られます。

また、水流・エアブラストによる方法も効果的です。高圧の水や圧縮空気をバリに吹き付けて飛ばす手法で、特にバリ発生量が多い製品の荒バリ取りに適しています。水や空気だけを使うため刃物が製品に当たらず、表面を傷つけずにバリ取りすることが可能なのです。さらに近年注目されているのがドライアイス・ブラストです。直径1~2mmほどの固体CO2(ドライアイス)粒を高速で吹き付けてバリを叩き落とす技術で、柔らかい樹脂粒などを用いる通常のブラスト同様、製品を傷めずにバリだけを除去できます。ドライアイス粒は衝突後に気化して消えるため、狭い隙間に入り込んでもメディア残りがなく複雑形状品のバリ取りに有効です(仮に粒が挟まっても溶けてなくなる)。ただしドライアイス自体の調達・保管コストが高く扱いも難しいため、安定運用には課題もあります。

化学的なバリ取り(化学研磨)

化学薬品を利用してバリだけを溶解してしまう方法もあります。専用の薬液や溶剤に部品を浸し、樹脂表面の薄いバリ層を化学反応で溶かして除去するやり方で、いわば「薬品による研磨」です。人手や機械では物理的に削りにくい微細なバリ除去にも有効で、樹脂だけでなく金属部品の仕上げ工程として用いられるケースもあります。ただし全ての樹脂が化学的バリ取りに適しているわけではなく、薬品が製品の素材を劣化させたり、人体に触れる製品には用いることができない場合もあるため、実際にこの方法が使われている製品は限られています。安全性やコスト面のハードルがあるため、主にどうしても除去できない極小バリに対する最終手段的に利用される技術です。


まとめ:バリ取り課題の解決と自動化のご相談

樹脂(プラスチック)製品のバリ取りは、素材特性から作業面の問題まで多くの課題を伴う難しい工程です。しかし、だからこそ近年は様々な技術開発が進み、自動バリ取り装置やロボットソリューションによって劇的な効率化・省力化が可能になってきました。生産効率や作業者の安全を考えれば、将来的にバリ取り工程の自動化は不可避とも言われます。もし樹脂バリ取りの自動化導入について「自社の製品では難しいのでは?」と諦めている場合でも、ぜひ一度専門家へご相談ください。当社トーバン工業でも、お客様の現場に適したバリ取り機・研磨機の提案を通じて作業効率の向上をお手伝いしております。実際のワークで仕上がり品質をご確認いただけるサンプル加工テストや、設備をご覧いただけるショールーム見学も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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