お役立ち情報
USEFUL
製造現場における自動車部品洗浄の自動化メリットと導入課題
2025.06.09
自動車部品の製造現場では、多くの場合、部品の洗浄工程を手作業や一部自動化で対応しています。加工後の部品に付着した切削油や切粉(きりこ)などの異物を取り除く洗浄は品質確保に欠かせない工程ですが、手作業中心では品質のばらつきや作業負荷など様々な課題が生じがちです。本記事では、自動車部品洗浄の重要性を改めて整理し、現場が抱える課題と洗浄自動化のメリット、導入時の検討事項について解説します。最後に、トーバン工業が提供する炭化水素洗浄機と温水洗浄機の特長や導入効果をご紹介し、現場目線で課題解決のヒントを提供します。
自動車部品洗浄の重要性
製造業における「洗浄」は単なる清掃ではなく、製品品質や後工程の安定に直結する重要プロセスです。例えば、金属部品の加工段階で付着した油分や切粉を十分に除去しないままでは、後工程の塗装やメッキの品質低下につながります。異物が残ったままでは塗膜が均一に乗らなかったり、メッキ不良を招いたりする恐れがあるのです。また、自動車のエンジンに微細なゴミが混入すると故障や事故につながることは容易に想像できますが、産業機械でも同様で、摺動部に残留した異物が摩耗や短寿命の原因となります。自動車部品の信頼性・安全性を確保するため、加工後の部品洗浄で異物や油分をしっかり除去し、清浄度(部品の清潔さの度合い)を管理することが不可欠です。
近年では、欧州を中心に自動車部品に求められる清浄度の基準が一段と厳しくなっています。残留異物の粒子サイズまで管理する国際規格も制定され、微細な異物まで除去できる洗浄技術が要求されています。つまり、どんなに加工精度が高くても、洗浄が不十分では最終製品の品質保証は成り立たないのです。品質トラブルや顧客クレームを防ぐためにも、部品洗浄は重要度を増しています。
現場の現状と課題
しかし現場では、部品洗浄の多くを人手に頼っているために次のような課題があります。
- 品質の安定性に欠ける
手作業洗浄では作業者の技量やその時の状態によって仕上がりにムラが生じやすく、異物の洗い残しや洗浄不足による品質ばらつきが発生します。人間が行う以上、常に同じ水準で汚れを落とすのは難しく、安定した清浄度を維持することが困難です。 - 作業者の負担が大きい
部品を一本一本ブラシやウエスで洗浄・乾燥する作業は肉体的にも負荷が高く、長時間の立ち作業や中腰姿勢による疲労蓄積が問題になります。洗浄用溶剤(例えばシンナー等揮発性の洗浄液)の臭気や蒸気も作業者の健康リスクとなり、防護具の着用や換気設備などの対策が必要です。人手による洗浄は過酷な作業になりがちで、人材確保や労働安全の面でも課題となっています。 - 属人化によるノウハウ依存
洗浄作業がベテラン作業者の勘と経験に頼っているケースも多く、いわゆる属人化(特定の人にしかできない状態)が進んでいます。その結果、その人が不在になると品質が維持できなかったり、新人への教育に時間がかかったりします。作業手順が標準化・見える化されていないと、製造ライン全体の安定稼働に支障をきたすリスクがあります。 - 生産効率のボトルネック
手作業洗浄は一度に処理できる部品数に限りがあり、生産タクトを上げようにも洗浄工程がボトルネックとなってしまう場合があります。ラインの他工程を高速化・自動化しても、洗浄だけが手作業では全体の生産性向上に限界があります。また、人手作業では残業や増員で対応するしかなく、人手不足の昨今では対応が難しい面もあります。
以上のように、現在の手作業・半自動の洗浄工程には改善すべき点が多く存在します。品質確保と効率化を両立するには、これら課題を解決できる新たな手立てが求められているのです。
部品洗浄自動化のメリット
そこで注目されるのが、部品洗浄工程の自動化です。洗浄を自動機に任せることで、現場の課題解決に直結する次のようなメリットが得られます。
- 品質の安定・向上
自動洗浄機は設定した条件のもとで常に一定の洗浄動作を行うため、仕上がり品質にばらつきが生じにくくなります。ブラシ圧や洗浄時間、液温などを機械制御することで、人手では難しい高度な洗浄力を安定して発揮できます。異物除去性能が向上し、高い清浄度基準にも対応しやすくなります。結果として不良発生を減らし、後工程への不具合流出防止につながります。 - 作業の標準化
人に依存していたノウハウを機械に置き換えることで、誰が操作しても同じ品質を得られる標準化が可能です。手順書やプログラムにより工程が見える化され、属人化を解消できます。これにより作業者のスキル差に左右されずに済み、教育訓練も容易になります。 - 省人化と生産性向上
自動化により人手作業を大幅に削減でき、人員不足の解消や他工程への人員シフトが可能になります。一台の自動洗浄機で複数人分の作業量をこなせるため、導入後の効率アップは確実です。 - 安全性の向上
機械化によって作業者が直接部品を洗浄する頻度が減り、安全面で大きなメリットがあります。例えば、手作業では中腰で重い部品を洗っていた作業も、自動機なら無理な姿勢を取る必要がありません。薬品への直接接触や飛沫による目・皮膚への危険も減り、労災リスクを低減できます。作業環境が改善されることで、従業員の負担軽減と健康維持にもつながります。 - 環境への配慮
自動洗浄装置には洗浄液をろ過循環して再利用するクローズドシステムを備えたものも多く、廃液発生を大幅に抑制できます。有機溶剤の揮発による大気排出や産業廃棄物を減らせるため、環境規制への適合や作業場の衛生環境向上に寄与します。
以上のように、洗浄自動化は品質・生産性・安全衛生・環境の全てに好影響をもたらすと言えます。では、実際に自動化を導入する際にはどのような点に注意すべきでしょうか。次に主な課題と検討事項を見ていきます。
自動化導入時の課題とポイント
洗浄工程の自動化を成功させるには、導入前に以下のような課題を検討し、適切な対策を講じることが重要です。
- 初期投資コスト
自動洗浄機の導入にはまとまった初期費用が必要です。ただし、人件費削減や不良低減による損失防止効果を考慮すると、中長期的には十分に採算が取れる場合も多いです。まずは洗浄に要している現行コスト(作業時間×人件費、消耗品費、不良発生コスト等)を試算し、機械化による削減効果と比較検討しましょう。 - 設置スペースの確保
新たに洗浄装置を設置するためのスペースが工場内に必要です。既存ラインにインラインで組み込む場合はレイアウト変更も伴います。大型設備を置く余裕がない現場もありますが、近年はコンパクト設計の洗浄機も登場しています。例えば弊社の金属板自動洗浄機は奥行き86cmと従来比3分の1以下の省スペースサイズで、狭い工場内でも設置しやすくなっています。レイアウト検討時には搬送経路や他設備との干渉も考慮し、必要に応じて装置メーカーとレイアウト案を協議するとスムーズです。 - 洗浄液の選定
洗浄媒体(洗浄液)を何にするかは重要な検討事項です。部品の材質や除去したい汚れの性質によって最適な洗浄方法は異なります。一般に油脂分の洗浄には炭化水素系溶剤(石油系溶剤)が効果的で、速乾性にも優れます。一方、水溶性の汚れや環境対応を重視する場合は水系洗浄(アルカリ性の温水や洗剤を用いる方法)が適しています。それぞれ防錆対策や乾燥工程の有無も異なるため、対象ワークや求める清浄度に応じて適切な方式を選びましょう。装置によっては溶剤系・水系の両方に対応できるものもあります。トーバン工業の洗浄機のように炭化水素系と温水(水系)で機種を選べるケースでは、自社の汚れの種類や環境方針に合ったタイプを検討できます。 - 洗浄品質の管理
自動機を導入した後も、所定の清浄度が維持できているか品質管理することが必要です。導入前に洗浄テストを実施して、ターゲットとする汚れが確実に落とせる条件を見極めましょう。導入後も定期的に洗浄後の部品をサンプリングし、残留異物の量や目視検査で汚れ残りがないかを確認します。洗浄液のろ過装置のメンテナンスや交換時期を管理し、常に安定した洗浄性能を発揮できる状態を保つことが大切です。 - 生産効率との両立
洗浄工程の自動化によって他の加工工程よりも処理サイクルが遅くなってしまっては本末転倒です。装置のタクトタイム(単位当たりの処理時間)や処理容量が自社の生産計画に見合うか確認しましょう。高速インライン洗浄機であれば数秒で1個の洗浄・乾燥が可能な機種もあり、大量生産ラインにも対応できます。生産形態によってはバッチ式など運用方法にも工夫が必要です。導入前に十分なシミュレーションを行い、生産性と品質向上を両立できる計画を立てることが成功のポイントです。
以上の課題を事前に検討し対策しておくことで、洗浄自動化の導入は格段にスムーズになります。それでは次に、これら課題に応える具体的なソリューションとして、トーバン工業の自動洗浄機の特長と導入効果を見てみましょう。
トーバン工業の炭化水素洗浄機・温水洗浄機の特長と導入効果
トーバン工業株式会社では、上記のような現場課題を解決するために独自開発した金属板自動洗浄機を提供しています。この装置は搬送式インライン洗浄機で、金属部品の洗浄・乾燥を安定して行えるよう設計されています。特に注目すべきは、洗浄液の種類に応じて選べる2種類のモデルを用意している点です。洗浄液に油性の炭化水素系溶剤を使用する「炭化水素系ブラッシング洗浄タイプ」と、環境に優しい温水を使用する「温水式ブラッシング洗浄タイプ」の二本立てで、用途に合わせて最適な方式を選択できます。
両タイプに共通する主な特長を以下にまとめます。
- 品質の安定・向上
自動洗浄機は設定した条件のもとで常に一定の洗浄動作を行うため、仕上がり品質にばらつきが生じにくくなります。ブラシ圧や洗浄時間、液温などを機械制御することで、人手では難しい高度な洗浄力を安定して発揮できます。異物除去性能が向上し、高い清浄度基準にも対応しやすくなります。結果として不良発生を減らし、後工程への不具合流出防止につながります。 - 強力な洗浄力(ブラッシング洗浄)
シャワー状に噴射する洗浄液と機械ブラシ洗浄を組み合わせた独自の洗浄方式により、頑固な油汚れや微小な切粉まで強力に除去します。ブラシが上下から部品を擦ることで細部の汚れも確実に洗浄できます。 - コンパクト設計
洗浄ユニットと乾燥ユニットを一体化しながら、装置本体の奥行きを約86cmという超コンパクトサイズに収めています。従来機の3分の1以下という省スペース設計で、工場内の限られたスペースにも設置しやすくなっています。 - 自動搬送によるインライン高速処理
装置内のロールコンベアで部品を投入から乾燥まで自動搬送します。生産ラインに組み込んだインライン洗浄が可能で、5秒洗浄・5秒乾燥(ライン速度5m/分)の高速サイクルで処理しても生産タクトに追従できます。 - 環境配慮のクローズドシステム
洗浄液を内部フィルターで循環再利用するクローズドシステムにより、廃液を極限まで削減しています。有機溶剤の蒸発や排水を抑えることで環境負荷低減とコスト削減を両立します。温水タイプには油水分離機能も搭載されており、高い脱脂性能を発揮します。また廃液がほとんど出ないため排水設備の工事が不要で、設置も容易です。
トーバン工業の自動洗浄機は品質向上と効率化、そして環境・安全対策までを一挙に実現するソリューションと言えます。既に幅広い分野で採用され、洗浄工程の合理化に貢献しています。
まとめ
自動車部品の洗浄自動化は、品質確保の要である洗浄工程を高度化し、製造現場の様々な課題を解決する切り札となります。自動化には初期投資や準備が必要ですが、その先には品質の安定と生産性向上の両立という大きなメリットが待っています。洗浄自動化は避けて通れないテーマです。ぜひ洗浄工程の革新にチャレンジしてみてください。
以下の弊社製品は、非常に高性能な自動洗浄機です。