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ダイカストのバリ取りにおける課題と自動化のポイント

2026.07.24

製造業、特に複雑な形状の金属部品を大量かつ高精度に生産する現場において、ダイカスト(高圧鋳造)技術は必要不可欠な存在です。しかし、ダイカスト加工において避けて通れない最大の難関が「バリ(フラッシュ)」の発生と、それに伴うバリ取り工程の負担です。バリ取り作業は長らく人手に依存してきましたが、品質のばらつきや作業者の健康被害、そして深刻な人手不足により、従来の体制を維持することは困難になりつつあります。

本レポートでは、ダイカストにおけるバリの発生メカニズムといった基礎知識から、健康被害や法的規制などの現場が直面する切実な課題、そして補助金を活用した最新の自動化・効率化の手法までを網羅的に解説します。製造現場の改善を模索する担当者にとって、課題解決への道筋が明確になる、実用的かつ安心できる情報を提供します。

 

1.ダイカスト加工における「バリ」の正体

ダイカストとは、アルミニウム合金や亜鉛合金などの金属を高温で溶かし、精密に加工された金型の空洞(キャビティ)へ高圧・高速で圧入し、瞬時に冷却して成形する鋳造技術です。このプロセスにおいて、製品の正規の形状から意図せずはみ出して固まった薄い金属の突起物を「バリ」と呼びます。

ダイカストの金型には、ランナーからキャビティへ溶湯を導く「ゲート」や、充填初期の溶湯などを受ける「オーバーフロー」、金型内の空気やガスを排出する「エアベント」などが設けられます。成形後は、製品につながったゲートやオーバーフローを切り離し、必要に応じて切断跡を仕上げます。

さらに、金型は通常2つ以上の部品(固定型と可動型など)を組み合わせて作られるため、その境界線である「パーティングライン(型合わせ面)」が存在します。高圧で溶湯を注入するダイカストの性質上、このパーティングラインの極めて微小な隙間から金属が浸入することは完全に防ぐことが難しく、これが線状または薄片状のバリとなって現れるのです。つまり、ダイカストにおいてバリの発生をゼロにすることは物理的に極めて困難であり、「いかに効率的かつ安全に取り除くか」が生産管理上の最重要テーマとなります。

 

2.バリの主な発生要因と関連する成形上の問題

ダイカストにおけるバリの発生を最小限に抑えるためには、まずその原因を正確に把握することが重要です。バリの発生は、主に以下の3つの要因が複雑に絡み合って引き起こされます。

① 金型の熱膨張と型合わせ不良

ダイカストでは、アルミニウム合金の場合で約650℃という非常に高温の溶湯を扱います。緻密に設計・加工された金型であっても、この高温の金属が繰り返し流れ込むことで、金型自体に熱膨張や熱応力による歪みが生じます。この変形によってパーティングライン(型合わせ面)に予期せぬ隙間ができ、そこに高圧の溶湯が侵入することでバリが形成されます。また、金型の長期使用に伴う摩耗、ひび割れ、欠けなども隙間を生む直接的な原因となります。

② 抜き勾配の不足による「かじり」

離型時に金型と製品の摩擦が大きくなると、製品表面が引きずられたり、金型に材料が付着したりする「かじり」が発生することがあります。かじりは一般的なバリとは異なる表面欠陥ですが、後工程での仕上げ作業を増やす原因になります。かじりは、設計段階での抜き勾配(製品をスムーズに抜くための角度)が不十分であったり、角の丸み(角R)が小さすぎたりする場合に発生しやすくなります。

③ 成形機(ダイカストマシン)の型締力不足

ダイカストマシンには、溶湯を押し込む圧力(鋳造圧)に対抗して、金型をしっかりと閉じておく力(型締力)が求められます。製品やランナーなどの投影面積と金型内圧に対して型締力が不足すると、鋳造時に金型がわずかに開き、パーティングラインから溶湯が流出することがあります。この現象が発生すると、パーティングラインの広範囲にわたって厚く大きなバリが発生し、後工程の負担が爆発的に増加します。

 

3.手作業によるバリ取りが抱える深刻なリスク

発生したバリを適切に処理せず放置すると、部品同士が正しく組み立てられない(嵌合不良)、稼働中の機械内部でバリが脱落して重大な故障を引き起こす、鋭利なエッジでユーザーがケガをするなど、製品の品質と安全性に直結する致命的な問題を引き起こします。

これらのリスクを排除するため、多くの現場では作業者がヤスリやベルトサンダー、エアーツールなどを手に持ち、一つひとつ手作業でバリを削り落としています。しかし、この手作業への依存は、現代の製造現場において持続不可能になりつつあります。

労働災害のリスク:腱鞘炎の蔓延

手作業によるバリ取りは、工具の振動と反復動作により、作業者の手首や指の腱に過度な負担をかけます。その結果、重度の「腱鞘炎」を発症するケースが後を絶ちません。腱鞘炎などの上肢障害が労災と認められるかは、上肢に負担のかかる業務への従事期間、発症前の業務量、反復動作や力の発揮などの負荷、発症までの経過を踏まえて個別に判断されます。一般的には相当期間の業務従事が評価されますが、短期間でも特に過重な業務に従事した場合は認定対象となることがあります。診断、治療方法、休業の必要性や期間は、症状や医師の判断によって異なります。

健康被害のリスク:粉じん障害と法的規制

金属を削る際に発生する微細な粉じんは、作業者の呼吸器に深刻なダメージを与えます。長期間吸い込むことで肺が硬化し、呼吸困難に陥る「じん肺」は、一度発症すると治癒が困難な不治の病です。

これを防ぐため、労働安全衛生法に基づく「粉じん障害防止規則」では、屋内で金属を研磨・バリ取りする作業に対して厳格な規制を設けています。研磨材を用いて動力により金属を研磨・バリ取りする作業の一部は、粉じん障害防止規則の対象となります。必要な対策は、固定式機械、手持ち工具、湿式加工などの作業方法や設備構成によって異なります。対象となる作業では、発散源の密閉、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、呼吸用保護具など、作業内容に応じた措置が必要です。また、対象設備の定期自主検査、作業場の清掃、粉じん作業に従事する労働者のじん肺健康診断などが必要になる場合があります。

品質のばらつきと「二次バリ」の問題

手作業のもう一つの限界は、品質を一定に保つことの難しさです。熟練の職人であっても、疲労によって力加減が変わり、削りすぎや削り残しが発生します。特にアルミニウムのような粘りのある素材では、一方向から削った際にバリが倒れて反対側に残ってしまう「二次バリ」が発生しやすく、これを取り除くための二度手間が作業効率を著しく低下させます。

 

4.バリ問題を解決する段階的アプローチ

バリ取りの課題を解決するためには、「上流工程でのバリ抑制」と「下流工程での効率的な除去」の両輪で対策を講じることが重要です。

上流工程:設計と金型での抑制策

前述の発生原因を潰すため、設計段階でパーティングラインの位置を工夫し、合わせ面の接触面積を増やして隙間を最小化することが求められます。また、金型表面に窒化処理(硬度向上)やPVD・DLCコーティング(潤滑性向上)を施すことで、離型時の「かじり」を劇的に減少させ、金型の寿命を延ばすことが可能です。さらに、製品サイズに対して十分な余力を持つダイカストマシンを選定することは基本中の基本となります。

下流工程:代表的なバリ取り手法の比較

発生してしまったバリを処理する方法には、製品の材質、形状、生産ロットに応じて様々な選択肢があります。各手法の特徴を以下の表に整理します。

バリ取り手法 処理メカニズムと特徴 適用シーンと課題
手作業(ハンドツール) ヤスリ、ベルトサンダー、リューター等を用いて作業者が直接削る方法。細部まで感覚を頼りに仕上げることができる。 小ロットや複雑形状に適するが、品質にばらつきが生じ、作業者の疲労・健康被害(腱鞘炎、粉じん)が甚大。
プレス機によるトリミング バリやゲートの形状に合わせた専用のプレス金型を作成し、パンチで物理的に打ち抜く方法。 処理時間が極めて短く大量生産に最適。ただし、専用金型の初期費用が高く、微細なエッジの仕上げには不向き。
バレル研磨 容器内に製品と研磨材(メディア)、コンパウンドを入れ、回転や振動による摩擦でバリを削り落とす。 一度に大量の部品を処理できるが、製品同士の衝突による打痕リスクや、全体の寸法精度への影響が懸念される。
ブラスト加工 砂や樹脂などのメディア、またはドライアイス粒を高速で吹き付け、衝撃でバリを除去する。 表面の粗化や洗浄を兼ねられる。ドライアイスは残渣が出ないがランニングコストが高い。
自動バリ取り機(専用機) コンベア等で製品を搬送し、回転する専用ブラシや研磨ホイールで均一に表面を処理する装置。 圧倒的な処理速度と安定した品質を両立。粉じん対策も機内で完結しやすく、現代の省力化の主流。

 

5.自動バリ取り機導入の圧倒的メリットと補助金活用

現代のダイカスト加工現場において、最も確実で効果的な解決策として注目されているのが「自動バリ取り機」の導入です。

対象製品に適した機械と加工条件を選定することで、作業者による仕上がりのばらつきを抑え、品質の安定化が期待できます。また、連続加工によって処理時間を短縮し、作業者の負担を軽減できる場合があります。処理時間や仕上がりは、製品形状、材質、バリの位置や大きさ、使用する研磨材などによって異なります。

さらに、安全衛生面でのメリットも計り知れません。危険な回転工具から作業者を遠ざけることで労働災害を未然に防ぎます。特に、粉じん障害防止規則においても、機械内部に適切な集塵機能を備えた設備や、湿式のバリ取り機を使用することで、加工時に発生する粉じんの飛散を抑制できる場合があります。ただし、湿式であっても作業内容や設備構成によって必要な安全衛生対策は異なるため、導入時には関係法令への適合性を個別に確認する必要があります。

2026年7月時点:導入に活用できる補助金制度

「中小企業省力化投資補助金(一般型)」では、原則として中小企業の補助率は2分の1、小規模企業者・小規模事業者および再生事業者は3分の2です。ただし、補助金額が1,500万円を超える部分の補助率は原則3分の1となります。通常の補助上限額は、従業員5人以下の場合は750万円、従業員101人以上の場合は8,000万円です。一定の賃上げ要件を満たす場合は、それぞれ1,000万円、1億円まで上限が引き上げられます。補助対象や補助率、上限額は公募回によって変更される可能性があるため、申請時点の最新の公募要領をご確認ください。

バリ取り機の導入についても、人手不足の解消や労働生産性向上の効果を具体的に示せる場合は、補助対象となる可能性があります。ただし、申請要件を満たしても採択や交付が保証されるものではありません。

 

6.バリ取りの極限を追求する「トーバン工業」

ダイカスト部品のバリ取りにおいて、どの機械を選べば自社の複雑なワークに対応できるのか、粉じん対策は万全かといった悩みを抱える現場責任者にとって、最適なパートナーとなるのがバリ取り機・バフ研磨機のトータルメーカーの当社トーバン工業株式会社です。

160有余年の歴史が裏打ちする技術力

当社は、江戸時代末期の1860年(万延元年)に東京・赤坂で刀鍛冶工房として創業して以来、一貫して金属加工技術と向き合ってきた歴史ある企業です。金属の特性を知り尽くしたそのノウハウは、現代の精密なバリ取り技術へと受け継がれています。単にバリを削り落とすだけでなく、自動車部品や精密機器に求められるミクロン単位の精密表面仕上げ(バフ研磨)を同時に行う複合機を開発し、多くの大手メーカーに採用されています。

特許技術を搭載した「BURRY TACK(バリタック)」シリーズ

当社の主力製品であるバリ取り・バフ研磨機「BURRY TACK」シリーズは、独自の特許技術である『軸受チャッキング方式』を採用しています。これにより、高速回転する研磨ホイールの芯ブレを極限まで抑え込み、長期間にわたって高精度な加工を持続させることが可能です。

また、粉じん対策として極めて有効な「湿式タイプ(BURRY TACK Ⅲ-CT-W型など)」のラインナップが充実している点も大きな特長です。水や研磨液を使用しながら加工を行うため、粉じんの飛散を根元から防ぎ、作業環境をクリーンに保つと同時に、摩擦熱による製品の歪みや樹脂部品の溶け出しも防止します。もちろん、運用が容易な乾式タイプも備えており、プレス品からレーザー加工品、異形ワークまであらゆるニーズに対応可能です。

導入前の不安を解消する「無料サンプル研磨」とショールーム

「本当にダイカスト製品の複雑なバリが取れるのか?」という不安を解消するため当社では充実したサポート体制を提供しています。ショールームでは、いつでも実機によるデモ稼働を見学できるほか、郵送での無料サンプル研磨にも随時対応しています。

バリ取り作業の効率化、品質の安定、そして作業者の安全確保という課題に直面している製造現場の方は、ぜひ一度、当社へ相談してみてはいかがでしょうか。長年の経験に基づく確かな提案が、現場の未来を大きく変える第一歩となるはずです。

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