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板金加工におけるバリ発生原因
2025.12.05
板金加工では、切断や成形の際に必ずと言っていいほど「バリ」が発生します。例えばシャーリングやタレットパンチング加工では、金型を通過した際に鋭利な突起(せん断バリ)ができ、レーザー切断ではワーク裏面に“ドロス”と呼ばれる付着物が生じます。また、プレス加工やタレパン加工でも金型の摩耗やクリアランス不適正、芯ずれなどの要因で大きなバリが生じます。金属は延性があるため、刃物で切断しきれなかった部分が塑性変形して残留するのがバリの主な発生原因です。
バリ放置によるリスク
バリを残したままにすると、製品品質と安全性に深刻な影響を及ぼします。鋭利なバリは作業者のケガの原因となり、機械装置内では異物化して故障や紙詰まりなどトラブルを引き起こします。またバリが残っていると組み立て時に部品同士が正確に噛み合わず、組み付け不良や機械の動作不良(たとえばギア噛み合い不良で故障につながるケース)を招きます。さらに、バリによって測定精度が低下し、外観が悪化するため品質全体が低下します。溶接や塗装工程では、バリが溶接ビードの障害になって溶接不良を起こしたり、塗装下地の密着性が悪くなることで塗装剥離を招くこともあるため、放置は危険です。
手作業バリ取りの課題
従来の手作業によるバリ取りには多くの課題があります。まず熟練技術者依存の問題です。ヤスリがけなど手作業バリ取りには熟練者が必要で、技能伝承も難しく、人手不足時代には特に不利です。またヤスリ掛けは1つずつ時間がかかり、大量生産には向きません。長時間作業になると作業者の疲労や作業負荷が大きく、生産性向上のボトルネックになります。さらに、作業者間で仕上がりにばらつきが出やすく、均一な品質を保つのが困難です。バリ取り作業は粉じんや騒音・振動も発生し、鋭利なバリに手を切られる労災リスクも高い(3K: きつい・汚い・危険)です。これら安全・健康リスクも重要な課題となります。
板金バリ取り機の主要方式と特徴
バリ取り機には複数の方式があり、形状や用途で使い分けられます。代表的な方式には次があります:
ブラシ式バリ取り機(洗車機型)
植毛ブラシを回転させてワーク表面を優しく研磨し、複雑な形状部品や凹凸面の微細バリを効果的に除去できます。ブラシが柔軟なためワークを傷つけにくく、金属から樹脂まで幅広い素材に対応。エッジのC面・R面取りも自然に行え、仕上がり品質が高い製品向けに最適です。
ベルト研磨式バリ取り機
サンドペーパーのような研磨ベルトを高速回転させ、直線エッジや大面積を一度に研磨します。平坦な板金部品の大量生産ラインで多用され、高速連続処理で時間短縮が可能です。構造は比較的シンプルで低コスト機種も多いですが、ベルトは消耗品なので定期交換が必要です。
ローラー式バリ取り機(ディスクブラシ式)
複数本のローラーまたはディスク状砥石を用い、エッジを物理的に削り取ります。比較的廉価で導入しやすい一方、表面処理鋼板や保護フィルム付きのワークには不向きです。
ボール式バリ取り機
複数の鋼球(ベアリングボール)でワーク表面をなぞり、突き出たバリを塑性変形させてつぶします。表面を削らずにバリだけを除去できるため、コーティング済み板金や養生シート付きのワークにも対応します。切削粉が出にくい点も特徴で、裏面バリ処理によく用いられます。
湿式(ウォータージェット)バリ取り機
高圧水流や研磨材混合水でバリを吹き飛ばす方式です。複雑形状の内部や小穴内のバリまで洗浄でき、金属はもちろんプラスチックやセラミックにも適用できます。水を使うため熱や火花がなく安全で、粉じんも発生しません。
これら方式は得手不得手が異なるため、ワーク形状や材質に応じて選定することが重要です。
板厚・材質別の最適機選び
ワークの材料や板厚に合わせて機械を選定する必要があります。硬い鋼材(SS、SUS)の厚板では、大きなバリに強力に対処できるベルト研磨や湿式(ウォータージェット)など高い研削力を持つ方式が向きます。一方薄板やアルミのように柔らかい素材や微細バリには、ソフトなブラシ式や水流式で十分に除去可能です。特にウォータージェットは薄板から厚板まで幅広い金属・樹脂に対応できます。また、亜鉛メッキ鋼板など表面処理鋼板の場合、ワークを傷つけないボール式やブラシ式が適しています。機種選定時は材質硬度とバリの厚みを考慮し、用途に合った方式を選ぶことがポイントです。
自動化導入の効果
バリ取り工程を自動化すると、多くのメリットが得られます。まず省人化・人件費削減です。自動機に置き換えれば従来の手作業人員を他工程に回せるため、人手不足対策やコスト削減につながります。次に作業効率の向上です。機械は一定速度で24時間稼働できるため、処理時間を大幅に短縮できます。手作業数分かかっていたバリ取りが、数十秒で完了する例も報告されています。さらに品質の安定化も大きな効果です。機械はプログラムどおりに動作するため、作業者による仕上がりのばらつきがなくなり、常に均一な仕上がりを実現できます。自動機は精密制御も可能なため高精度なエッジ加工が可能になり、検査手間やクレーム低減にも寄与します。最後に安全性の向上があります。危険なヤスリ作業が自動化され、作業者は鋭利なバリや粉じんに触れなくて済むため、労働災害が大幅に減少します。このように自動化は生産性・品質・安全性の全てを改善し、快適な職場づくりに貢献します。
洗車機型ブラシ式バリ取り機(自社製品)の特長
当社では、ガソリンスタンドの自動洗車機のような6本ブラシ構造の洗車機型ブラシ式バリ取り機を開発しました。名前の通り、回転ブラシでワークを両面から一括研磨し、短時間でバリを除去する独自コンセプトの装置です。内部に配置した6本の回転ブラシが多方向からエッジを磨き、硬い金属のバリも強力に削り取ります。同時にブラシがエッジに追従するため、適度なR(面取り)が形成され滑らかな仕上がりになる点が特長です。ワークはコンベアで自動搬送され、数秒から十数秒で処理完了します。搬送速度やブラシの回転数、押付圧力は材質・形状に合わせて調整でき、薄板から小物部品まで幅広く対応可能です。また装置内に大型集塵機を内蔵し、ブラシ研磨で生じる粉じんを強力に吸引します。ワークはコンベア上で真空吸着されるため、加工中に跳ね上がらず安全かつ確実に処理できます。
実際の導入事例では、従来20名で行っていた手作業が4名に減り、1個あたりの処理時間は150秒から28秒に短縮できました。作業スピードと品質が飛躍的に向上し、エッジの角張りもなく安定した仕上がりになったと好評です。洗車機型ブラシ式の優れた処理能力と使いやすさで、多品種少量から大量生産まで幅広い現場で効果を発揮しています。
お問い合わせ・トライアルのご案内
バリ取り自動化のご相談やデモンストレーションのご依頼は、お気軽にお問い合わせください。貴社のワーク形状や生産条件に最適なバリ取り機をご提案し、トライアル研磨で仕上がりを実際にご確認いただけます。現場の効率化・品質向上に向けて、ぜひ弊社までご相談ください。
